RESEARCH

価値創成部門


次世代モノづくりを実現する手段として、実体としてのモノとそれが供給するサービス、それを実現する社会システムが一体となり、価値創成を図る必要があります。それはいわゆる製品サービスシステムの概念にとどまらず、人や社会へのインセンティブ付与や社会制度の設計等までも組み入れ、ライフサイクルまで考慮した、広義のサービスシステム構成となります。本部門では、デジタルトリプレットという新しい概念を用いて上記の問題を扱います。これは、現実世界と情報世界を1対1に対応付けるサイバーフィジカルシステム、デジタルツインの考え方を拡張し、知的活動世界を繋げて三層構造にした考え方です。デジタルトリプレットでは、作り手の知的活動も含めた統合的なフレームワークで考えることができるため、価値創成過程を明示化できる点が本質的です。本部門では、作り手と使い手により一度モノ・サービスが社会に実装された後も、保守やアップグレード等の形で社会がシステムの面倒を見ることで、社会の中でシステムが成長、進化するエコシステムつくり(社会システムつくり)を目指します。これにより、サステイナビリティ社会の実現にも貢献します。

認知機構部門


次世代モノづくりでは、社会の潜在的なニーズを的確に把握し、それに対応した提供価値を具体的に提示する能力が求められます。この際には、作り手が有する技術drivenではなく、使い手を起点とした、その価値を最大化することに適切な手段を研究、開発、利用することが重要です。「モノ・サービスの使い手、作り手、関係者、さらにはそれらが生み出すモノ・サービスすべて」を社会と考えると、その中で人が人工物をとらえるしくみ(認知機構)の解明が必須です。これには人の認知過程を扱う心理学の知見をも用いた、文理融合型の研究が必要です。人がモノ・サービスを扱う際の主な特性としては、ユーザビリティ(使いやすさ・使いにくさ)や嗜好(好き・嫌い)、態度(主体的・受動的)が考えられ、これらの関係が適正化されなければなりません。たとえば、スマートフォンと自動車は共に有益ですが、その不適切な利用が「ながら運転」という弊害を生じさせる危険性があります。本部門では、次世代モノづくりで創造されたモノ・サービスが、人や社会と適正に融和し受け入れられるために、人がモノをどう認知し、モノとどう相互作用するかを解明し、人、社会に資する人工物つくりに役立てる取り組みをおこなっています。

実践知能部門


本部門では生産システム設計や技能抽出・教育システム設計等を遂行する、出口を指向したAI(実践知能)を用いた新しい社会実装技術の確立を目指しています。具体的には、昨今飛躍的な進歩を遂げている深層学習を中心とするAI認識技術に、工学系研究科が有するハードウェア技術やインフラ技術を高度にすりあわせることで、世界的に圧倒的な競争力を有するモノ・サービスシステム作りを目指しています。例えば、認識技術を用いた建設機械による作業の自
動化、医療画像からの自動診断、化学プラントの制御の自動化など、さまざまな活用可能が考えられます。方法論としては、対象とする問題において必要とする情報選択を起点として、そのために必要な実世界データ、データ取得に必要な高性能センサ等の物理デバイス、デジタルトリプレットデータの処理手法選択、ウェブ技術等を活用したサービス構築とその継続的改善、さらに人間のモノづくり活動の支援という、情報システムの循環設計を中心に据えた研究開発をおこなっています。ここで全体のフレームワークには過去の人工物工学研究で培われた知見を用い、実世界寄りのハードウェア開発要素には工学系研究科等のresourceを用いることで研究開発を進めています。このように両者が強固なタッグを組むことで、最先端AI技術を含む人工物の、社会実装技術が構成されます。

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